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KUMAKURA DNA

引き継いだ建築のDNAを、京の伝統と技を、新しい住まいに…。

Profile 
熊倉 淳

株式会社 熊倉工務店
代表取締役
熊倉 淳
昭和29年京都に生まれる。日本大学理工学部卒業後、大阪の設計事務所で設計の経験を積む、 その後株式会社熊倉工務店に入社。
平成7年、代表取締役に就任、4代目を継ぐ。趣味は ラジオコントロール船で長距離レースに参加すること。
星座:双子座

Owner's Talk



◆ 熊倉工務店の遺伝子

 熊倉工務店は京都で産声をあげ、京都のまちなみに調和した住宅をつくり続けて、120余年目を迎えました。
 この一世紀の間、特に戦後は耐震性や耐火性など、建築の基準も大きく変わりました。アメリカから入ってきた建築スタイルや機能的なライフスタイルへの憧れ、天然材から新建材、鉄から合金の活用など、私たちの周りの住環境は高度経済成長が進むにつれて一変したのです。今や住宅は部品として工業生産され、素人でもできるパズルのように、規格品の組み合わせで簡単に家が建ちます。そして、家は「建てるもの」から「買うもの」へと、単なる大型消費財のように考えられるようになりました。
 このような時代の趨勢の中で、熊倉工務店もそのときどきに応じて変わってきた部分もあると思います。しかしながら、変わらない部分もまた、あるのです。
 私たちがつくる住宅は、お施主様とともに考え、ともに創っていく「注文住宅」であり、これは創業からずっと変わっていません。もちろん、時代の要請で、鉄筋構造で内装は木軸といった建物や大型建築にも応えられる技術も自信も持っています。かたちはどうあれ、どの場合でも工務店としていちばん大切なことは、建てた後の修繕や改修を常に考え、お施主様と一生のおつき合いをさせていただくことであり、熊倉工務店が貫いてきた姿勢なのです。
 熊倉工務店では、ひとつの仕事に対し、一貫してひとりの担当者が引き受けています。技術保持者が監督として住宅をトータルプロデュースし、引渡しから、さらにメンテナンスなどのアフターフォローに至るまで、責任をもって引き受ける。一方で私が総監督として、すべての設計・施工の目配りをする――全体を広く見渡せるシステムを徹底しているからこそ、きめ細かなサービスができるのです。こうして「住まう」人の気持ちを考えた家をつくることが、熊倉工務店の代々の総領が受け継いできたDNAのひとつだと確信しています。


◆ 京の「おもてなし」の基本を学ぶ

 私たちは百年以上続いた伝統の技を誇りに思っています。先人から引き継いだ建築のDNAは得がたいものです。私たちは決してただの容れ物をつくっているのではない、お施主様のライフスタイルにあった一生ものの住まいを、また次の世代にまで受け継いでいただける住まいをつくっているのだ、という自負があります。それが、私たちがお施主様に信頼いただける礎となっているのだと思っています。 その思いをお施主様に伝え、社員一人ひとりが監督して自覚と責任をもって仕事に携われるよう、常に努力しています。もっとも大切にしているのは、お施主様との心のおつき合い――いわば「おもてなし」の気持ちです。お施主様に心から信頼され、安心して任せていただくためにはどうすればよいかを考え、人間として常識的な礼儀や作法を徹底して教えています。その一環として、例えば、社内に茶室を もうけて、週に一度、茶道の稽古を行っています。京都で培った「おもてなし」の意味や「立ち居振る舞い」の美しさを理解し実践するには、日頃からの地道な積み重ねが必要なのです。
 また、京町家などの再生も含めた家屋の修繕工事も積極的に引き受けています。京都をかたちづくってきた古き良き伝統文化を残しながら、それを住みやすい空間として蘇らせ、今までに多くのお施主様に喜んでいただきました。私たちのこうした思いが伝わったとき、やっとお施主様と対等になれたという喜びを感じられるのです。


◆ 難しい注文こそ「やってみましょう」

 お施主様から家づくりのご相談を受けても、コストやその他の問題で、請負をすぐに承諾しかねる場合があります。ある時は、何度かお話し合いをしていくうちに、お施主様の家に対する情熱が伝わってきて、おつき合いが始まります。少し話をすれば「家が大好きな人」かどうかは分かるものです。そのようなお施主様には、その情熱にできるだけ応え、最善を尽くそうという気持ちになるのです。
 それができる背景には、熊倉工務店をともに支えてくれる、大工や左官をはじめとした、しっかりしたスタッフたちがいます。「こういう思い入れやからやってくれへんか」と事情を話すと、うちの職人は「やってみまひょ」と言ってくれます。「縁あってきはったお施主さんっやないですか、やらしてもらいまひょ」という心意気の人が多いのです。これは心強いことです。本物の職人は、お施主様同様、家づくりへの情熱をもっているものなのです。
 そんな業者、職人との親睦や勉強会のために「順睦会」という会を作っています。受注目的ではなく、熊倉の理念を理解してくれている業者の集まりです。信頼できる多くのスタッフがあってこそ、お施主様との堅固な信頼関係も築くことができるのです。


◆ 京都の建築・未来形

 建築にとってもっとも大切なことは、それぞれの地方の気候風土にあった建物を建てることです。時代に応じてライフスタイルはどんどん変化しているのですから、住みやすくできるところは住みやすくしたい。しかし、いくら便利でも、秩序を乱す建物は建ててはいけません。建築業界が発展しないと産業も停滞するという向きもありますが、環境を無視してまで建築物で埋め尽くしたくはありません。
 それよりも京都は観光都市として、人々を「おこしやす」と迎えいれるものをつくらなくてはいけないと考えます。
 古くから「都」として常に時代の先端を歩んできた京都は、保守的なようでいて実は新しいもの、奇抜なものをいちはやく取り入れてきた土地です。市電を最初に走らせたのも京都ならば、平安神宮も産業博覧会に際してつくったものです。
 私のこれからの目標のひとつとして、「奇抜なもの」を創っておきたいと常々思っています。それは、決して京都のまちなみにとって違和感をあたえるものではありません。本誌のタイトル“SCENERY”が意味するものは、(一地方の)全体の風景(景観)であり、まち全体をトータルで考えた「まちづくり」が大切なのです。
 お金をかけてイベントをすることではなく、また、建築業界だけでなくいろいろな分野での活性化を考えて新しい京都の建物づくりに参画していきたいと思っています。
 そこには、行政とのよりよいパートナーシップやそこに住む人たちの理解も必要です。そして、そんな信頼関係の中で「熊倉ブランド」がかたちとなり、ひとつの作品として、今まで以上に知っていただけるようになればと思っております。


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