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熊倉工務店は京都で産声をあげ、 京都のまちなみに調和した 住宅をつくり続けて、 120余年目を迎えこの一世紀の間、 特に戦後は耐震性や耐火性など、 建築の基準も大きく変わり アメリカから入ってきた 建築スタイルや機能的な ライフスタイルへの憧れ、 天然材から新建材、 鉄から合金の活用など、 私たちの周りの住環境は 高度経済成長が進むにつれて 一変したのです 今や住宅は部品として工業生産され、 素人でもできるパズルのように、 規格品の組み合わせで 簡単に家が建ちます そして、家は「建てるもの」から 「買うもの」へと、 単なる大型消費財のように 考えられるようになり 時代の趨勢の中で、 熊倉工務店もそのときどきに応じて 変わってきた部分もあると思います しかしながら、 変わらない部分もまたあるのです
私たちがつくる住宅は、 お施主様とともに考え、 ともに創っていく「注文住宅」であり、 これは創業からずっと変わっていません もちろん、時代の要請で、 鉄筋構造で内装は木軸といった 建物や大型建築にも応えられる技術も 自信も持っています かたちはどうあれ、 どの場合でも工務店としていちばん 大切なことは、 建てた後の修繕や改修を常に考え お施主様と一生のおつき合いを させていただくことであり、 熊倉工務店が貫いてきた姿勢なのです

熊倉工務店では、ひとつの仕事に対し、 一貫してひとりの担当者が 引き受けています 技術保持者が監督として住宅を トータルプロデュースし、引渡しから、 メンテナンスなどの アフターフォローに至るまで、 責任をもって引き受けます

一方で私が総監督として、 すべての設計・施工の目配りをする 全体を広く見渡せるシステムを 徹底しているからこそ、 きめ細かなサービスができるのです こうして「住まう」人の気持ちを考えた 家をつくることが 熊倉工務店の代々の総領が受け継いできた DNAのひとつだと確信しています
私たちは百年以上続いた 伝統の技を誇りに思っています 先人から引き継いだ 建築のDNAは得がたいものです 私たちは決してただの容れ物を つくっているのではない、 お施主様のライフスタイルにあった 一生ものの住まいを 次の世代にまで受け継いでいただける 住まいをつくっているのだ、 という自負があり それが、 私たちがお施主様に信頼いただける 礎となっているのだと思っています その思いをお施主様に伝え、 社員一人ひとりが監督して 自覚と責任をもって 仕事に携われるよう、 常に努力しています。
もっとも大切にしているのは、 お施主様との心のおつき合い ――いわば「おもてなし」の気持ちです
お施主様に心から信頼され、 安心して任せていただくためには どうすればよいかを考え 人間として常識的な礼儀や作法を徹底して 教えています

その一環として、例えば、 社内に茶室をもうけて、 週に一度、茶道の稽古を行っています 京都で培った「おもてなし」の意味や 「立ち居振る舞い」の美しさを 理解し実践するには、 日頃からの地道な積み重ねが必要なのです また、京町家などの再生も含めた 家屋の修繕工事も積極的に引き受けています 京都をかたちづくってきた 古き良き伝統文化を残しながら、 それを住みやすい空間として蘇らせ 今までに多くのお施主様に 喜んでいただきました。 私たちのこうした思いが伝わったとき、 やっとお施主様と対等になれたという 喜びを感じられるのです
お施主様から家づくりのご相談を受けても、 コストやその他の問題で、 請負をすぐに承諾しかねる場合があります

ある時は、何度かお話し合いを していくうちに、 お施主様の家に対する情熱が伝わってきて、 おつき合いが始まり 少し話をすれば 「家が大好きな人」か どうかは分かるものです そのようなお施主様には、 その情熱にできるだけ応え、 最善を尽くそうという気持ちになるのです
その背景には、 熊倉工務店をともに支えてくれる、 大工や左官をはじめとした、 しっかりしたスタッフたちがいます

「こういう思い入れやから やってくれへんか」と事情を話すと、 うちの職人は「やってみまひょ」と 言ってくれます 「縁あってきはった お施主さんやないですか、 やらしてもらいまひょ」と いう心意気の人が多いのです

これは心強いことです 本物の職人は、 お施主様同様、 家づくりへの情熱を もっているものなのです そんな業者、 職人との親睦や勉強会のために 「順睦会」という会を作っています 受注目的ではなく、 熊倉の理念を理解してくれている 業者の集まりです 信頼できる多くのスタッフがあってこそ お施主様との堅固な信頼関係も 築くことができるのです
建築にとってもっとも大切なことは、 それぞれの地方の気候風土にあった 建物を建てることです 時代に応じて ライフスタイルは どんどん変化しているのですから、 住みやすくできるところは 住みやすくしたい しかし、いくら便利でも、 秩序を乱す建物は建ててはいけません 建築業界が発展しないと 産業も停滞するという向きもありますが 環境を無視してまで 建築物で埋め尽くしたくはありません それよりも京都は観光都市として、 人々を「おこしやす」と 迎えいれるものをつくらなくては いけないのです
古くから「都」として 常に時代の先端を歩んできた 京都は、 保守的なようでいて 実は新しいもの、 奇抜なものをいちはやく 取り入れてきた土地で 市電を最初に走らせたのも 京都ならば、 平安神宮も産業博覧会に 際してつくったものです

これからの目標のひとつとして、 「奇抜なもの」を 創っておきたいと常々思っており いろいろな分野での 活性化を考えて 新しい京都の建物づくりに 参画していきたいと思っています 行政とのよりよい パートナーシップやそこに住む人たちの 理解も必要でありそして、 そんな信頼関係の中で 「熊倉ブランド」がかたちとなり、 ひとつの作品として、 今まで以上に 知っていただけるように なればと思っております
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